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ポール・オースター著『幻影の書』と堀江敏幸著『おぱらばん』を読む [本]


幻影の書


昨年秋に出版されたポール・オースターの『幻影の書』を遅ればせながら読んでます。ちょうど今3分の2くらい迄読み進めてますが、40歳直前にして、不慮の飛行機事故で最愛の妻と子供達を突如失った大学教授のディヴィッドが、長期休職して誰とも関わらず、皮肉にも家族と引き換えに転がり込んで来た莫大な生命保険で鬱々と隠遁生活をしていた時に偶然出会ったサイレント喜劇役者ヘクター・マン。あまり有名では無い、多分亡くなっているであろうその役者に魅入られ、家族の死の苦しみを忘れて何かに没頭したかったディヴィッドは彼の希少なフィルムを全米のみならず、ヨーロッパ迄追い求め、結局彼の研究本を書くはめに。その本が出版された後ヘクター・マンの妻と言う人物から彼の所へ来る様にとの謎の手紙が舞い込み、それを機に止まっていた彼の人生がどんどん転がって奇妙な出来事が起こり始める、、と言うお話です。ポール・オースターって本当にストーリー・テラーだなぁと言う感じでグイグイ引き込まれ、かなり大胆で濃いセックス描写もあるのですが、彼の作品に共通する静謐な感じは健在です。後書きで訳者の柴田元幸さんも書いてますが、オースターって本当に映画と密接に関わってる作家さんですよね。


おぱらばん (新潮文庫)


堀江敏幸と言う作家さんは初めて読んだのですが『おぱらばん』面白かったです。(最初『おばらぱん』と勘違いして、その語感から何となく茶色いコッペパンか、今流行の「はらドーナッツ」なんかを勝手に連想してましたが(笑)フランス語で「以前」と言う意味の単語なのですね)フランスに留学してパリ郊外に住んでいた著者のエッセイ集なのですが、学生寮の様な所で中国人の「先生」と呼ばれていた人物と偶然パリの街中で再会して突然卓球に誘われ、コテンパンにやられる表題作を始め、異国での異邦人達の何だかちょっと笑っちゃうけど少し哀しい様な短編が、フランス映画(ジャック・リュベットの『北の橋』が出て来て嬉しかったです)や文学、アートと絡めて語られてて映画好き・アート好きにも面白いのでは?と思いました。突然画廊でとある絵が欲しくなる、その心の動きを追ったエッセイ面白かったです。いかにもフランス好きのヒネっぷりが良いですね。最後の方にあった『のぼりとのスナフキン』って言うエッセイも登戸の通過地点としての半端さ(登戸在住の方すいません)、郊外の茫漠とした感じを言い当てていて何か分かるなぁ〜って感じでした。
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コメント 6

katsura

堀江さんは「熊の敷石」を読んだことがありますが、ぼやんとした印象しかありませんねえ。
ポール・オースターのきりきりとしたストーリーの仕立て具合にはいつも舌を巻いてしまいます。「幻影の書」読みたいですね。
by katsura (2009-03-14 13:53) 

kurohani

katsuraさん
堀江さんの他の小説は未読ですが、ぼやんとした印象と言うのは何となく分かる様な。もしかしたらエッセイの方が良いのかな?

ポール・オースターは何時読んでも良いですね♪ほぼ最終章辺り迄読み進めましたが、一気読み出来る面白さでした。

nice! ありがとうございました♪
by kurohani (2009-03-14 14:57) 

kurohani

+kさん
nice! ありがとうございました♪

by kurohani (2009-03-17 22:34) 

kurohani

dukeさん
ここにもnice! ありがとうございました♪
by kurohani (2009-03-18 22:18) 

ogawama

「幻影の書」、読みましたよ。最後にああ落とすとはねえ。オースターおじさんだから許せますが。堀江敏幸さんは「河岸忘日抄」で出会ってノックアウトされました。「いつか王子駅で」もなかなかでした。「おぱらばん」は確か文庫で買って、積んであります〜(笑)。
by ogawama (2009-03-18 23:03) 

kurohani

ogawamaさん
ogawamaさんお読みになってたのですね。最後ちょっとアルマが可哀想な感じもしましたが、、。おっしゃる通りオースターだから許されるのでしょうかね?

堀江敏幸さん「河岸忘日抄」「いつか王子駅で」面白そうですね。機会があったら読んでみます。この前岡本太郎へ行く道中、登戸を通った時「おぱらばん」を思い出しました(笑)
by kurohani (2009-03-21 15:52) 

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